暗闇にさす光

 私たちが、血を流しながら検査を受けている最中、なぜか、他の病院に搬送されたはずのおばさんが、その時いなかった夫とともにいた。ぴんぴんしているその姿を見て、思わず「なぜ、ブレーキをふまなかった!」

 またしても院内で「わたしは悪くない」を叫ぶおばさん。足を引きずる私のむなぐらにつかみかかるその夫。それを助けようと夫をはがいじめするゲストハウスのオーナー。病院の担当医が大声で止めるまでそれは続いた。

 非常識な、なんて非常識な。

 「あの。。あの宮古島に!あの美しい自然と素敵な人たちばかりだと思っていた宮古島に!こんなくそ野郎がいたのか!!!こんなところ、二度と来るものか!!!」事故の痛みを忘れるほどのショックだった。

 この後、息子とふくちゃんは、入院ということになる。車いすでふくちゃんを運ぶのは、息子の妊娠以来だった。が、その時は、喜びがあった。今回は、真逆。しばらくして、4名の医師がベッドへと来た。。。

 「本当に、不幸中の幸いでした。本当なら、どなたかが、亡くなられても不思議ではない事故でした。本当に、よかったです。」

 あ、そうか、そうだ。事故に遭遇した不幸ばかり考えていた。ほんとに、その通りだ。まだ、痛みが激しく残っていたふくちゃんには、「こんなに痛いのに、よかったってどういうこと?」だったみたいだ。

 ただ、この事故で、普段は知ることのできない自分たちのこころの奥底を知ることができた。それは、どんなに家族のことを愛しているかだ。

 この事故をきっかけに、家族の絆を再確認することができた。私たち夫婦は、何でも言い合う関係だ。よいときは、しっかりとしたコミュニケーションがとれる。悪い時は、ひどいけんかになる。そのけんかで何もかもがいやになることもあった。

 でも、いかに互いを思い合っているかがわかった。恋愛の時に感じていた古い記憶。結婚生活という日常に埋もれてしまっていたあの純粋な気持ち。

 あなたがいない人生など考えられない」「わたしは、あなたとともに生きていく」「本当に愛してる、自分のことよりも」「あなたのためだったら、何でもできる」そういう気持ちが心の奥底でしっかりと息づいているのを感じることができた。

 何気ない日常がそういう気持ちの上に成り立っているのを感じることができた。

 翌日、たくさんの人がお見舞いにかけつけてくれた。泊っていたゲストハウスの人たち。ありがたかった、そのはげましで、気が本当に楽になった。癒された。

 そして、それまで定宿にしていたホテルの従業員の方々とオーナーもかけつけてくれた。どうして私たちが、事故に会い、入院したことがわかったのだろうか。どうも宮古テレビで放映されたらしい。それほどの事故だったのか。

 綺麗なお花をいただいた。そして、「こんなときには、必要でしょ。これ!」と手渡してくれたお見舞いのお金。

 びっくりする私たち。「相手はね、こんな非常識な人でね。。」「たいへんだったね〜。そんな人もいるって、わたし、聞いたことがあるよ〜。たいへんだったね〜。」

「こんな島二度とくるもんか!」という私の気持ちがこの言葉で一瞬にして「ぐらっ」となった。今回は、別のハウスに泊っているにもかかわらず、わたしたちをお見舞いに来てくれたホテルの人たち。

 浄化されていくわたし達の悪感情。ヒーリングの原点。








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